JPモルガン報告:LLM利用が前月比70%増、GPUレンタル料は7カ月連続上昇――AIインフラ需要はなお強い
AI マーケットサマリー
JPMorgan"のデータは、AIインフラ需要の持続を示している。LLMのトークン使用量は、価格下落が小幅にとどまる中で前月比70%急増し、GPUのレンタル料金は7カ月連続で上昇、DRAMスポット価格は前年比で大幅に高い水準を維持している。これは高性能コンピュートとメモリの逼迫が続くことを裏付け、主要なAIハードウェアのサプライチェーンに恩恵をもたらす。一方、NANDの軟化が3カ月続いていることは、ストレージサイクルが後期局面にある可能性を示唆し、将来的な設備投資(capex)修正リスクを高めている。
影響度
● 中
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JPモルガンは7月1日付のデータセンター関連インサイトで、AIインフラ需要を測る3指標(①LLMのトークン利用量と価格、②GPUレンタルレート、③メモリチップのスポット価格)を追跡した。結論は、AI需要の地合いは引き続き良好だというものだ。
まずLLM。OpenRouter上のトークン利用量は6月に前月比70%増、前年同月比では20倍に拡大した。呼び出し当たりの単価は前月比で小幅上昇した一方、前年比では下落が5%にとどまり、米国拠点モデルはむしろ前年比で上昇している。総支出は前月比70%増、前年同月比16倍。利用量の伸びが価格低下を大きく上回っており、仮にトークン価格が年率5%〜10%低下しても、利用量が倍増し続ける限り推論収益は大きく伸びるとの見立てだ。JPモルガンは、トークン経済はモデル提供者に有利と評価した。
内訳では、米国モデルの利用シェアは35%にとどまる一方、支出の85%超を獲得している。利用上位5位と支出上位5位の双方に入ったのはAnthropicの「Claude Opus 4.7」のみで、価格決定力が米国側に偏っている状況が示唆される。
次にGPUレンタル。ハイパースケーラー以外のクラウド事業者におけるGPUレンタル価格は6月に総じて上昇し、上昇は7カ月連続となった。A100は前月比6.3%高で5カ月連続上昇、H100は同3.7%高で7カ月連続、B200は同2.7%高で投入後9カ月にわたり着実に上昇。足元ではB200の価格がH100の2倍水準にある。
一方で階層間のプレミアムは縮小している。H100のA100に対する上乗せは4月の1.77倍から6月は1.67倍へ低下。B200のH100に対する上乗せも2.58倍から1.96倍へ縮小した。高性能計算資源の逼迫は緩みつつあるものの価格は上向いており、供給増を需要増が吸収している構図がうかがえる。A100が最も強い上昇となった点も注目される。旧世代チップが値下がりせず上昇したことは、予算制約のある顧客がコスト効率の良い計算資源を奪い合っていることを示し、供給過剰の兆候とは言い難い。
最後にストレージ。DRAMスポット価格は6月に前月比10%高の43.14ドルとなり、前年同月比740%上昇で3カ月連続の上昇。NANDスポット価格は前月比0.3%安の27.03ドルで小幅下落が3カ月続く一方、前年同月比では518%上昇と高水準にある。全体として歴史的に高い水準にあるものの、DRAMは上昇継続、NANDは軟化し始めたという方向性の違いが鮮明だ。過去のサイクルではピーク局面でNANDが先に軟化し、その後DRAMが追随する傾向があり、NANDの3カ月連続の弱含みはサイクル後半入りを示唆する。JPモルガンは明示していないが、データからはそう読める。
まとめると、LLM利用の前月比70%増、GPUレンタル料の7カ月連続上昇、DRAMの前年同月比740%高という3点はいずれも、AIインフラ需要がピークから程遠いことを示している。一方で構造変化も進む。支出の85%超を米国モデルが握ることは価格決定力の偏在を示し、B200対H100のプレミアム低下(2.58倍→1.96倍)は高性能計算資源の希少性緩和を映す。NANDの軟化はストレージサイクルの局面転換を示唆する。強気材料は続くが、ロジックは固定ではない。
Tide View(見解)
本レポートの最大の盲点はデータソースの偏りだ。OpenRouterは主に開発者、スタートアップ、AIエージェントの実装用途を対象としており、OpenAIやAnthropicの直接APIトラフィック、ハイパースケーラーの社内導入分を含まない。つまり捉えているのは「ロングテールのAI需要」であり「総需要」ではない。ロングテールが急拡大しているならコア需要はさらに強い可能性がある一方、コアが先に冷え、ロングテールが追いついているだけという可能性もある。投資判断への含意は大きく異なる。
GPUレンタル価格も、追跡対象は非ハイパースケーラーの第三者供給で、AWS、Azure、GCPの公式レンタルレートは含まれない。第三者が値上げできている事実は、計算資源不足が大手からロングテールへ波及していることを示し、トレンドとしてはAIハードウェアに追い風だ。ただし、ハイパースケーラー自身の稼働率を直接示すものではない。内部需要が既に飽和していても余剰容量をレンタル市場に出していないだけなら、実態の需給はレポートが示すほどタイトではない可能性がある。
ストレージの分岐シグナルも個別に検討が必要だ。NANDは3カ月連続で下落し、DRAMは上昇を続ける。これはストレージサイクル後半の典型像に沿う。NAND下落が続けば、メモリメーカーの売上見通しは下方修正され、半導体製造装置を含むセクター全体の設備投資見通しにも波及し得る。
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